昔の映画は観てません。
終盤は大団円と言えるラストになっているとはいえ、結構不快な時間が長い映画だった。
父の虐待、夫ミスターのDV、妹ネティとの別離。これらの苦しみから、セリーはショグやソフィアの力を借りて逃れて自立する(父の死により、父とは血が繋がっていなかったこと、実の父が自分に店を残してくれていたことを知る)。
セリーが離れ、おそらくはショグも離れて、ミスターは孤独に晒され、心を入れ替える。
ネティはセリーが出て行った後もミスターの住所に手紙を送り続けており、そこにはアメリカに移住するために助けてほしいと書かれていた。ミスターは土地を売ってネティが帰ってくる手助けをする。
一方でミスターはセリーの店に顔を出す。セリーはミスターの「俺たち、いつか…」の言葉を遮って「友達に」と言う。
その後セリーはミスターに感謝祭のディナーの招待を出し、そのディナーの場にサプライズでネティと、出産直後に引き離されたセリーの子供達が現れる。
これは数年スパンの話なので、何もセリーもミスターをすぐさま赦したわけではない。
けど、セリーの受けた苦しみの年数に比べたら遥かに短いし、孤独の苦しみと自分に暴力を振るう人間と一つ屋根の下で暮らす苦しみは同じものではない。
「赦すなよ!!こんなやつ!!!!」と叫びたくなった。
ミスターの父もまた女は支配しなくては的な考えの持ち主だったので、ミスターもトキシック・マスキュリニティというものの被害者だったのだろう。ミスターほどではないが、ハーポもそうだ。けれどその弊害のケアを、被害者であったセリーがしてあげているのは釈然としない。
ネティと再会できたのはミスターのおかげだが(黙ってしたことだから贖罪の気持ちは本当にあるんだろう)、そもそもこの2人が離ればなれになったのってミスターのせいだし、手紙をずっと揉み消していたし、父に引き離されたセリーの子供と再会できたのは単にラッキーだったし。
セリーは自立したからこそ、ミスターを赦せる心の余裕が出てきたのかもしれない。
赦せる強さがセリーにはあるということなのかもしれない。
でも…でも…!!
ミスターがもっと痛い目に遭っていたらもうちょっと受け入れられたかもしれないけど、土地を手放しただけじゃなあ…
あとネティの役はハリー・ベイリー、リトルマーメイドの実写でアリエル役だった人。
セリーや他の登場人物とも顔や体型が違いすぎるので簡単に見分けがつくという長所があるのに、大抵離ればなれであまり同じ画面にいない。
一方同じ画面によくいるセリー、ソフィア、ショグが顔も体型もそっくりである。出てきた時は服が違うのでわかるけど、セリーが自立して綺麗な服を着るようになるともう……
ミスターが「ショグは美人だがセリーは不細工だ」みたいな発言をするシーンがあるけど、設定上美醜の差があるならもうちょっと違うタイプの女優にしてくれ…。