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【ドキュメンタリー感想】塀の中の少年たち-なぜ彼らは殺人を犯したのか-

 

面白い!!

仮釈放なしの終身刑を言い渡された少年たちが、2012年に少年犯罪者への絶対的終身刑の判決が違憲として再審請求できるようになったことをきっかけに、釈放されるのか?されないのか?というドキュメンタリー。アマプラで観られる。

釈放されたりされなかったり。

 

もちろん殺人は重大な犯罪であり、もし仮に更生したところで、被害者は戻ってこないし、被害者の家族の人生だってやり直せない。しかし、成人と違ってまだまだ生きるであろう少年が(刑務所内ではいつ死んでもおかしくないという受刑者の発言があるけど)終身刑って、成人よりも罪が重いような気がしない? 基本的に成人より長く生きるわけだし。

 

ドラマではないので殺人の正確な動機はわからない。

1つ目のエピソードで隣人で友人でもあったアラナを殺害したアーロンは今でも事故だったと主張しているけどその事故の際の話は事件当時からコロコロ変わり、嘘なのかなと思うし、かといって重い判決が下った理由が「反省の色が見られない」だけなら、反省しているふりをしたもん勝ちなの?って思うし、小さい頃から虐待を受けてきていて心の傷も癒えないままに残りの人生をずっと刑務所で過ごすとしたら彼の人生って一体何なのか……。

もちろん同じような幼少期を過ごしても真っ当に生きる人はたくさんいるわけだし不当に命を奪われた方の人生は?って話なのでそれが免罪符になるとは思わないが……実際彼の姉は普通に生きているんだしね。

 

終身刑が下った理由がちょっと人種差別っぽかった2つ目の犯人は仮釈放が決定。なんか……同じ罪だった前科ありの他の白人の仲間は短い刑期だったのに前科もなく実行犯でもないこの人だけ終身刑で、「判決に人種差別的な要素はありませんでした」と主張する人は白人だし、すっごくモヤッとする事件だったの(ちなみに殺人罪ではなく共謀罪)。

 

もう1つ、ガールフレンドに唆されて彼女の両親を殺そうとした(父は生存)少年は、彼女の方があまりにも……だったのと、この被害者である父が許している(娘の教唆によるものだったからかもしれないけど)のに州の規定で再審請求できる期間を過ぎているという結末だったのでもやっ。好きな女の子が、親に虐待されていると主張し、殺してって頼んでくるの、少年だったら「彼女を助けられる唯一の方法だ」と思ってしまう、ものなのかな……。割と悲惨な生い立ちの加害者が多い中、この人だけ普通の家庭の育ちで、彼女の教唆がなければ殺人なんてしないはずだし、その理由も上記なので再審が行われれば更生の見込みはあると判断されそうなんだけどな。

ちなみにこの虐待の有無については父は否定しているんだけど、こういう話になるともちろん認めるわけはないので真相は闇の中。交際は本当に否定されていたみたいだからそれの恨みも少しはあったんだろうか。

 

でも、日本の少年院は釈放後の社会復帰を目的として更生プログラム的なものを組んでいるよね?? 多分終身刑の受刑者にそんなものはないよね。釈放されるとなったらまた別かもしれないけど、ただ刑務所の中で定められた刑期を過ごして、社会に出て、しかも社会にでた経験なんてないうちに刑務所に入ったのに、ちゃんと社会に溶け込めるのかな。

強盗と強姦の罪で刑期100年越えだった人は、被害者(生きてる)が性犯罪者の更生プログラムを見学に行くと言っていたのでそういうのがあるんだろうけど。ちなみにこのケースも被害者本人が今も苦しんでいるとは言え、再審後に「当時聞けなかった謝罪の言葉を聞けてよかった」と言っており、双方の主張する刑期の間くらいで判決が落ち着いたので割と大人しく見ていられるやつだった。この加害者には色々余罪があったとは言え、他の、強姦に加わらなかった人が20年弱の刑期だったというのがすごくない?  この刑期が短かった人、強姦に加わらなくても「連れてきたんだから殺せ」って主張したんだよ。

 

加害者は性的虐待を受けていたケースが多めなので、それが免罪符にはならないとしても、適切に生きられなかったのは本人のせいじゃないのに、生い立ちの影響で一生刑務所で過ごさなければならないとしたら、一応更生させるという目的のはずの刑務所に意味ってあるのかな。

彼らには彼らで傷を癒す時間が絶対に必要なのに、それが今後ずっと与えられないんだよね……。

仮釈放が認められなかったケースで、視聴者側からしても「これは終身刑のままだろうな」っていうのがあったんだけど、弁護側が「被告は過去に性的虐待を受けていた」っていうシーンでは、被告が涙ぐむの。なんか……胸に迫るというか、生々しい感じで見ているのが辛かった。でもこの被害者の父親は事件の影響でPTSDを発症しており、こっちも見ているのが辛い。被害者家族の傷っていうのはやはり加害者にできるだけ重い罰が下ったのだということによって多少なりとも慰められるものだよね。

 

いくら悲惨な生い立ちでも裁判には加害者の親も来て(基本的には)釈放を望むけれども、加害者の人生に影を落としておいて、被害者遺族に申し訳ないの一言もなく(もちろん娘である加害者自身にも)「釈放されるといいわね〜!」って感じだったクリステルの親族(母と叔母)を見て、何となく彼女の生きづらさを感じてしまい辛かった。親が家を追い出したから娘は住む場所を失い、未成年だったからこそ他の大人の家に身を寄せるしかなかったのに……。この件は終身刑が妥当とされて刑期に変更はなかった。

 

少年少女の罪に、「善悪の区別がつかない歳であるはずがない」ってよく言われるし実際そう思うし、このドキュメンタリー中でも再三言われていることなんだけど、「殺す以外解決方法を思いつかない」っていう短絡さは若年者特有のものかなという気がした。ガールフレンドの両親を殺そうとしたやつもそうだし、最後の報復殺人とかね……成人だったらきっと違う解決策を模索しただろうし、成人ならとれる手段が多いはずなんだけど……。