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【映画感想】43年後のアイ・ラブ・ユー - 視聴者の想像力が試される

優しいピアノの音とともに何の悲劇も起こらない優しい世界……

 

(原題:Remember Me)

テキトーなあらすじ

映画評論家のクロードは初恋の女優・リリーがアルツハイマーで施設に入ったことをニュースで知る。かつての恋人に会うため、自身もアルツハイマーのフリをして同じ施設に入所するが、リリーはクロードのことを忘れていた。

 

 

クロードはリリーと疎遠になった時、パリへ彼女に会いに行くものの、彼女はクロードの姿を認めても、マネージャーか何かと一緒に去ってしまう。雨の中立ち尽くすクロードはそこで彼女を諦めることにした……という回想がある。

そしてこの施設で親交を深めるクロードはリリーに、リリーがかつて自分宛に書いた情熱的な手紙を読ませる。ここでリリーは「このクロードっていうのはあなたのことなのね。私に(同名の)リリーを重ねているから私に構うのね」というようなことを言い、それをクロードは肯定するんだけど、その時のリリーを見る愛おしげな視線と言ったら、、、

そこで雨が降ってきて、施設の職員が二人を呼びにくる。かつてマネージャーか何かと去った時彼女は顔を背けるようにして去っていったけど、施設の職員に支えられつつ中に入ろうとするリリーはクロードのことを振り返るんだよね。雨の中クロードが立ち尽くしているという構図は同じ。分かり易すぎてあざとさすら感じられるが私は単純なのでまんまと心動かされた。

 

他にもクロードの娘のセルマ、孫娘のタニアといったキャラクターが出てきて、特にタニアは父の(セルマの夫の)買春問題で学校でからかわれており、父にも、そして母の事なかれ主義にも鬱屈とした思いを抱いている。タニアがクロードと話す過程でクロードのアルツハイマーが虚言だとタニアにバレるのだが、事の次第を話し、かつてリリーが素晴らしい演技をしたという冬物語を施設で上演するのに協力してくれることに。タニアが呼んできたのは学校の演劇部か何か?で大根役者もいいところでしたが、役者のセリフが飛んだシーンでかつて冬物語を演じたリリーはそのセリフを思い出し、同時にクロードのことも記憶に蘇る。

 

 

正直、冷静な頭で考えてみると娘家族の問題やタニアの恋なんかはとっ散らかった印象だし、クロードは退所時に入所者たちにあたたかく声をかけるけれどそこまで彼らと親交を深めていた描写はないし、リリーがかつてクロードを選ばず現在の夫を選んだ理由はわからないままだし(結婚するなら今の夫がよくて、その時クロードを嫌いになったわけではないんだろう)、クロードの未練が蘇るきっかけはただ単にネットのニュース記事を目撃したからというだけなので、考えようによっては身勝手な行い……。

結局のところリリーには今も夫がいて、でも離婚するわけではないし、クロードを選んだというわけでもない。ただあの時、かつての愛情が蘇り、それが今施設で自分と親しくしてくれたクロードと繋がったというただそれだけのこと。

こう言ってしまうと究極に自己満足な話なので人によってはもやっとするかもしれないし、私自身他人には手放しで薦めづらい。

ただし私はこれを観て涙が涸れるかというほど泣いたし、マスクはビッショビショだった。

感情を動かすのはロジックではない。

頭の中で「あれは?」「これは?」と疑問に思う箇所はいくつもあるが、その全部を説明されていたら冗長の極みだと思うし、別に交際が結婚にまで至らなかったという事実に理由はなくても構わないのだ。

きっとかつてのリリーにはクロードとの交際を続けるより今の夫と結婚する方がよく思えたというだけで。こういう系のストーリーを見ると頭の中のガソリンスタンドに雪が降り始める。

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