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【映画感想】プロミシング・ヤング・ウーマン - 傍観者にならないでいるのが難しい、と感じてしまって鬱

あらすじだけさらっと読んで、きっと昔ニーナをレイプした男の股間が爆発してENDなんだろうなと思いながらワクワクして観てたらあんなことになって気分がブルーに……。

でもブルーになった分色々考えて、復讐してスカッとするなんていう終わりにしちゃいけなかったのかもと思った。

 

(原題:Promising Young Woman)

テキトーなあらすじ

キャシーは医学部を中退後、カフェでバイトをしている。かつて同じ学部で、今は小児科で働いているライアンと再会する。ライアンとの仲が深まる中、キャシーはかつて親友ニーナを死に追いやった男が結婚すると聞いて復讐を企てる。

 

キャシーの復讐の対象には「酒の勢いに任せて女とヤリたいだけの男」と、「ニーナをレイプした男」の他に「ニーナの訴えに耳を傾けなかった連中」も含まれる。後者は「酔ってたんでしょ?」とか「証拠不十分だった」とか自分への言い訳付き。ニーナの訴えに耳を傾けなかった人たちの中には弁護士もいたが、彼はそのことを深く後悔しており、キャシーに謝罪する。

キャシーはその謝罪を聞いた後、ライアンとの恋愛に前向きになるが、マディソンからアルがニーナをレイプしている時の動画を見せられ、その場にライアンがいたことを知る。

 

キャシーはこのことをライアンに問い詰め、アルの最後の独身パーティーの場所を聞き出す。

ライアンは「ガキだったんだ」「キャシーを愛している」「許すと言ってくれ」と縋ってくるが、キャシーが取り合わないので罵り始める。本人たちにとって若気の至りであっても、当時被害を受けたニーナの人生は閉ざされ、親友のキャシーはこの間ずっと、今も苦しめられている。ライアンのことをキャシーは最初から信じてはいなかったが、信じようとしていたのに……。ほんとにめちゃくちゃクソ男である。アルもクソだがライアンも同じくらいクソ。こいつは前科もつかないのでもっと胸糞悪い存在に感じる。親友だったキャシーに向かってこんな罪悪感のかけらもないような言い訳する??

 

キャシーはストリッパーの格好をしてパーティーに出向き(この時に流れている不穏な音楽がBritney SpearsのToxic)、アルに復讐しようとするが、反撃にあって殺されてしまう。キャシーを殺してしまったアルは動揺するが、結婚を控えているからといって仲間と一緒にキャシーの死体を遺棄する。

キャシーの失踪で警察がライアンのところにも聴取にくるが、ライアンはパーティーの話をしない。キャシーの精神状態が不安定だったということで警察も自殺だろうと結論づけてしまう。

しかしキャシーは自分が殺された時のため、手紙を書いていた。それによって通報され、結婚式の最中警察が来る。

ライアンにも予約されていたメッセージが届いた。

「終わったと思ってないよね? これからよ」

アルもライアンも他の人も、レイプが終わったその瞬間が”地獄の終わり”だと思っていただろう。しかしニーナの地獄はレイプの始まりから自殺に至るその時までずっと続いていた。キャシーは地獄の始まりにアルたちを導いたにすぎない。完全に自業自得だけれども。

 

私は復讐は、遂げられるのを本人が見届けなければ意味がないと思っている。

復讐は何にもならないというが、何かになるとしたら、本人がスッキリするためだと思っているからだ。だからこんな復讐の仕方は復讐の意味があるのかと、少し考えた。でも、全部観た後には、キャシーってもともと死にそうだったというか、ニーナの死以降生きているつもりではなかったのかもしれないとも思う。

前向きに生きる力は、ニーナの自殺の時に一度なくなり、ライアンの裏切りによって再び失われたんだろう。キャシーは復讐して、過去と折り合いをつけて生きていくことは望んでいなかったのかもしれない。ライアンとの恋に生きるのか?とも思うシーンはあったが、それはそれとして、彼女はスッキリするために復讐したかったのではなく、相手の人生をニーナの人生同様台無しにしてやりたかったのだ。

 

アルが学生時代にしたことは”若い頃のやんちゃ”として片付けられてしまったが、もはや若くもなく、今回は直接手を下しているので紛うことなき殺人である。しかもそれはアルやライアンが記憶の彼方に葬っていた大昔のやんちゃに起因している。忘れようがない。

前科として一生アルについてまわる。これが復讐か。

 

しかし、誰かの人生を踏み躙っておいて、「アナスタシアが大切なんだ」とか言うアルはマジでグロテスクだったな〜〜

そして、動画もまわしてたし、こういうやつは絶対武勇伝みたいに周りに面白おかしく言いふらしまくってたはずなのでアナスタシアが知らなかったとも思えないんだが、どうなんだろ……アル自身は隠していたにしても、学生時代の友人たちとの交流の中でそういうの耳に入らないかな。

 

直接的な危害を加えずとも、その場にいて止めなかったライアンや、まわってきた動画を面白いものとしか思わなかったマディソンたち、ニーナの訴えをまともに取り合わなかった学部長、弁護士……それらの人々すべてがニーナを死に追いやったわけだが、自分がそれらの人々の立場にならないとも限らない。忘れているだけですでになったことがあるかもしれない。っていうか多分ある。そしてそれらの細々した心当たりに、「でも別に友達ってほど仲良くもなかったしな」とか「そんなのにいちいち手を差し伸べていたらキリがないしな」って言い訳してしまう。誰かに責められたら多分それを口に出してしまう。

そういう自分の醜さを思い知らされてしまうのがすごく心を疲弊させるというか、観ていたらマディソンの反応は酷いと思うのに、ここにいたら私もマディソンみたいな態度とるんだろうなと思ってしまうことが、辛い。

疲れている時に再生したので余計に苦しい。

そう考えるとラスト・ナイト・イン・ソーホーは本人が相手を滅多刺しにしていたのでよかったなと思ったが、でもあれはあれでずっと過去に囚われて苦しみ続けていたわけだし、やはりそもそもは他人に危害を加えんなという話だよな(そこ)