正直テーマはありきたりだと思うけど(差別する側される側の友情的な……)それでも観てよかったと思う。
前も見えないほどの大雨やまっすぐに走れないほどの大雪の中を走ったりトニーが前見てなかったりするのでハラハラしたよ。
(原題:Green Book)
テキトーなあらすじ
イタリア系アメリカ人のトニーは黒人ピアニスト、ドクの運転手として南部のコンサートを巡ることになる。
トニーは旅に出る前、黒人が口をつけたコップを捨てたり、荷物を積むのを黒人の助手?にやらせたりと、強烈な差別主義者というわけではないがナチュラルに差別意識が根付いている。しかし妻のドロレスはそうではない。単純に貧乏だからコップが減るのが嫌だったのかと思っていたけど、彼女が黒人に対して差別感情を持っていないのは全編通して明らか。
夫婦の価値観がここまで違うのは少し不思議だと思っていたけど、考えてみればトニーは何も「白人が最高だ」と思って差別しているわけではないんですよね。単に黒人の親しい人がいないから、仲間が黒人を「黒ナス」って呼んでもなんとも思わないだけで、クリスマスの日に黒人を「ニガー」と呼んでいるのを聞いた時は「そう呼ぶのやめろ」って言ってるし、仲間は仲間で来たドクを歓迎してますよね。「ダチのダチはダチ」精神が発揮された瞬間というか、仲間も信念があって差別してたわけじゃないことが分かるシーン。信念がある差別ってなんだよって感じだけど……。
トニーが「黒人ならフライドチキン好きだろ?俺はイタリア人はパスタ好きって言われても平気だ」っていうシーンがあるんですが、こういうのって誰しも持ってると思うんですよ。そしてその後晩餐で出されたフライドチキンも良かれと思って出されたんでしょうしね。日本人ならみんな寿司とラーメンが好きだと思われてる感じに私も息苦しいのでちょっと分かる。
グリーンブック観た人が異口同音にフライドチキンが食べたくなったというシーン。トニーに押し切られてチキンを口にしつつ「不衛生だ」というものの、差し出された2個目を受け取る。骨を窓からポイ捨てするトニーに倣ってドクも窓から骨を投げるが、その後トニーがドリンクのカップを投げ捨てた時は車を戻して拾わせた。ドリンクカップ投げた後後ろ振り返ってるドクが可愛かった。劇場は人が多かったので笑い声があちこちから聞こえました。
トニーは運転しながらペラペラ喋るのでしょっちゅう「前を見ろ」って言われます。私もいつ事故るかとヒヤヒヤした……。あと面白かったのは「少し静かにしてくれ」と言われた時「ドロレスにも言われるよ。言い方そっくり……」とまだ喋り続けたところ。
あと好きなシーンはイブの日に大雪の中走っていたら警官に呼び止められて、パンクを教えてくれた後ふたりに「メリークリスマス」って言ってくれるシーンですね。これまで受けた仕打ちを洗い流すこの言葉……。
トニーがドロレスにきちんといつも手紙書いてるの微笑ましいですよね……。最初の手紙にドクのことを「あいつは天才だ。でも時々考え込んでいる。天才はあまり楽しそうじゃない」と書いているのがよかった。これ最初の手紙ですよ。観察眼すごい。
トニー、暇さえあれば手紙書いてるのが本当にいい。手紙ではしょっちゅう使うであろうDearのスペルさえ間違えてるってことは普段手紙なんて書かない人なんですよ。なのにめっちゃ筆まめじゃないですか?1回1回苦労して書いてるんだろうなって思う。
ドロレスへの手紙はドクのアドバイスを受けて内容が詩的に洗練されていくが、ドロレスには全てがトニーの言葉じゃないのがお見通しだった。そこでエンドロールっていうのがよかったな!!
そしてクリスマスの日に、ドクが一人じゃなかったことも。
実話に基づいてるって言ってもせいぜい「白人が黒人の運転手を務めたことがあった」くらいの事実でしょ、と思っていたんだけどちゃんと現実でも友情が続いていたんだね!!「最強のふたり」でも思ったことだけど、こうして映画が終わっても、その先も緩やかに関係が続いていた事実がわかることで、登場人物たちもきっと同じような未来をたどるんだろうなって想像がつくのがいい。