月と星のエンタメ感想ブログ、

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【読書感想】嫌いなら呼ぶなよ/綿矢りさ - 怖いもの見たさコメディ

書店で平積みになっている本を何気なく眺めていたら、これがラスト1冊だったので購入してしまった。単純なので「売れてます!!」って書かれてめちゃくちゃ積まれている本より、ひっそり在庫減ってる本が気になってしまう。

気になったので手に取り、レジに並びながらぱらっと見たら、字がそこそこ大きめで短編集ぽいので新品で買うのをもったいなく感じ、列を抜けて書店の隅っこでamazonとかに中古で出ていないか検索した。なかった。仕方がないから列に並び直した。本のために1,500円を惜しむ自分を少し情けなく感じた。

 

半日で読み終わる量なのでコスパは悪い娯楽だが、でもぜひ読んでほしい。

綿矢りさの本を初めて読んだが、他も読んでみようかと思うくらいには面白い。

私が最近誉めていた南綾子みたいな後味の悪さは一切ない。ぐちゃっとしていない。カラッとしている。どの題材も、いくらでもぐちゃっとべちゃっとさせれらる題材なのに、だ。

 

「眼帯のミニーマウス」にこんな文章がある。

MCMのミニピンクリュックよりも、MOSCHINOのトイベアがでっかくプリントされたバックパックの百倍イカれてるから、地雷女たちよ次はあれを流行らせたまえ。

綿矢りさって結構昔からいるからそれなりに歳だろうに、地雷女の感性をわかりすぎてる。

……と思ったがまだ30代だった。若い。すみませんでした。

 

表題作の「嫌いなら呼ぶなよ」が一番面白い。妻の女友達夫妻が行うパーティーにのこのこ出かけて行ったら自分の不倫を断罪する場だったという話で、不倫する男は確かに悪いが、この妻の女友達夫婦もなんだこいつらという感じなので、ちょっと不倫男に同情してしまう。そしてこいつが妻の女友達を苦手に思う理由がわかってしまうのだ。

「老は害で若も輩」も面白い。こういう三つ巴になって自分以外の二者がメールでバトっている場面に遭遇したことがある。そしてそいつらは水面下で(CCを外して)こちらに意見(ていうか加勢)を求めてくる。私の場合は(私の組織の場合は)これとはちょっと事情が異なっているのでここまで泥沼でも胃痛展開でもなかったが、状況的に身に覚えがあるだけにリアルで、しかも読者は絶対的傍観者なので面白い。

 

帯に「ミニ裁判へようこそ♡」と書かれているが、この文句もすごくいい。

自分には関係がないところで人が戦っている様は面白いのだ。